猫被りか、君子豹変か、それとも狸?―解けぬ謎

 読売新聞政治部が先に出版した「検証 国家戦略なき日本」は、政治を現実に動かした貴重な仕事だと言える。

 科学技術、海洋政策、エネルギー、安心・安全、知的基盤の五つの分野でいかに日本が立遅れているかについて、克明に追い掛け、政治の対応を迫ったものである。2年前に読売紙上で連載が始まった頃に話題になった。当時、公明党の政調メンバーと読売の担当記者とで懇談したことがある。印象に残ったのは、国会において科学技術を議論する場がきわめて少ないという点。委員会では、省庁再編に伴って文部科学委員会があるが、議論の大半は、教育ばかりで科学技術分野にはあまり及ばない。そういえば、私が関与してきた安全保障は、外務、安全保障と常任委員会が二つ、特別委員会でも、沖縄・北方、イラク、テロなどと幅ひろく設置されることが多い。科学技術は密接に安全保障と関連していることを思えば、画竜点睛を欠く感はいなめない。

 このほど、海洋基本法案が衆議院を通過したが、これも読売の連載に刺激を受けた与党有志議員による議員立法の色彩が強い。かくのごとく、政治の現場に影響を与えた新聞連載も珍しい気がする。

 一つ気掛かりなのは、参院議員会館で04年6月に資源エネルギー長期政策議員研究会が開かれた際に、わが党の斉藤鉄夫衆院議員(現政調会長)が「我々が国会で必死に原子力の推進を訴えている時に、後ろから切りつけるのに等しいことだ。なんたることかっ」と、経済産業省の資源エネルギー庁長官をにらみつけ、激しい口調でなじったとの記述についてである。これには正直驚いた。斉藤さんは、きわめて穏和でいつも笑顔を絶やさない。人からなじられても、なじったりすることはないと信じていた私には、全く別人のことのように思える。事実と違うと思ったが、本に掲載されているということは、新聞連載の時点で、斉藤さんがこれは事実と違うと抗議、訂正を申し入れてないということだ。うーん。猫をかぶっている彼に、私は騙されてきたのか、それとも君子豹変ということなのか。いや、演技したとの説も。なるほど、猫でもなく豹でもなく、実は狸かもしれない。謎は深まる・・・。

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