毎年五月の末に相生市で開催されるペーロン祭りの開会式に参加した。昨年初めて参加した際に、挨拶で相生出身の高島俊男さんのことを話した。『本が好き 悪口言うのはもっと好き』を始めとする『お言葉ですが』シリーズがいかに言葉を使う観点から卓越した本であるかを指摘、凄い人物を生み出した地に誇りを持ってほしいと結んだものだ。今年は、丁度『座右の名文 ぼくの好きな十人の文章家』を読んだばかりだったので、また、話そうと思ったが、しつこいのでやめた。この本は、新井白石から斎藤茂吉までの10人の文章について取りあげ、面白いエピソードを満載、実に得難い内容になっている。ご本人の言葉を寸評方式で紹介しよう。
新井白石。自分で自分をこんなに優秀だとして自ら自伝を書いた。『折たく柴の記』は破天荒の傑作。
本居宣長。支那の書物一辺倒だった頃に日本を学ぶのが学問だとした。『玉勝間』は日本人が書いた筆記の最もすぐれたもの。
内藤湖南。強靭な知力と魄力とをあわせもった大知識人。『日本文化史研究』などの講演は、どれも面白い。背後に、おびただしい読書量と、独自に体系付けて理解してきた学識の裏付けが。
幸田露伴。果て知れぬほどあまたの書物を読み、すべてが記憶にとどまっている希代の博識。『評釈芭焦七部集』は一代の傑作。
津田左右吉。歴史と思想の研究家。ただし、生涯、どこの研究家の仲間に入れて貰えず。一人で勉強して、一人で教授になって、一人で授業をした。
柳田国男。『遠野物語』は、近代文語文の最もすぐれた文章で、卓越した文学作品。「母殺し」のはなしが一番好き。戦前に桑原武夫がびっくりし、戦後には三島由紀夫が仰天した。
寺田寅彦。物理学、音楽、絵画、写真、映画、俳諧、おそろしく間口のひろい人。どれを読んでもおもしろいが、おすすめは、「写生紀行」。
斎藤茂吉。日本の文学者で一番好き。生涯ずっと東北の田舎者丸出しで生きた。うなぎが大好きで、小便が近い。すぐ憤怒逆上する。存在自体がコッケイ。その文章は非常に爽快。「滞欧随筆」は、特に世評が高い。
長くなるので、夏目漱石と森鴎外は割愛する。
Posted on 07.05.29 by AKAMATSU Masao
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