興味尽きない"野蛮人"の外交秘話

 それにしてもキリスト教からマルクス主義、さらには神道といった彼の思想的系譜には恐れ入る。単なる博覧強記ではない。どんな相手でもその知的水準をみぬけるとの自負心には圧倒される。ちなみに、『野蛮人のテーブルマナー』では、村上春樹氏の新訳レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』を引用。ちょっとした引っ掛け質問に対する相手の反応や回答で、どの程度の知的水準かをみわける例をあげていてなかなか興味深い。外交の裏舞台をかくも自在に披露してくれる元「外交官」は、類例をみない。その功罪は議論のあるところだろうが、現場を知らぬ者としては率直にいって面白い。

 そんな思い入れが昂じてしまい、正月早々の学者と政治家とのある懇談の場で、「佐藤優論」を少々ぶったところ、高名だが高齢の経済学者からしつこく反発された。「一体彼はなにが言いたいのかわからない」と。外務省やらこの国の外交のありかたに注文をつけているのでは、などといっても引き下がってくれない。「あなた方学者やわたしども政治家など、既成の権威への挑戦ともいえ、ともかく面白いではないですか」とやって、ようやく幕を引く有様。なんだか佐藤優のサポーターになってしまった自分に苦笑いを禁じ得なかった。佐藤優を正面切って批判する外務省畑の人間はでてこないのか、というのが私の目下の関心事。

 ところで村田さんは、著者に「ニコルソンのように、外交の実務にも将来携わり、第二の外交論を改めてわれわれに教示していただきたい」とすすめているが、国連次席大使を勤めた師匠の北岡伸一さんのように、としてあげてほしかった。

(おわり)

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