日本の解剖率は約3パーセント。先進国中最も低い。解剖が必須である変死体でも僅かに9パーセントでしかない。遺体の解剖が、死因を明確にするのだが、官民双方に理由があって日本は極端に少ない。
死亡診断が軽視される社会では明らかな犯罪行為や児童虐待すら発見出来ず、治療効果判定も行われない無鑑査医療がはびこる。死因が分からないまま闇から闇に葬られる社会に警鐘を乱打し、オートプシィ・イメージング(Ai)―死亡時の画像診断―の導入を提言するユニークな本・『死因不明社会』と出会った。あの『チームバチスタの栄光』の海堂尊がミステリーより怖い真実として、小説の解題的趣向をとりつつ、真正面から説いている。
先日NHKのラジオ深夜便を耳にしていたら、海堂さんの声が聞こえてきた。四夜にわたって自作を著者が語る企画だったが、彼が小説を書くに至った思いが熱く伝わってきた。小説に登場する二人の対話といった形式を折り込んでの解説は、ややもすると難解に思われがちな医療の分野の話を分かりやすくしてくれる。福島の大野病院事件や大相撲時津風部屋の新弟子力士怪死事件など最近の実例をあげてのケース比較は、いかに今の日本社会が犯罪天国であり、冤罪地獄に直結しているかをも暴いてくれ、極めて興味深い。
かの小説は近く映画化もされる。さぞかし面白いものになろう。が、面白がっているばかりでなく、背後に潜む死因不明社会とAiが拓く新しい医療に日本中が気付くようになればいいな、と思う。
もっとも、4日付け読売新聞3面「スキャナー」は、この問題に切り込み「死因究明・遺族置き去り」と制度見直しを求める声を特集していながら、なぜかAiにふれていない。この辺りの背景を、書いた記者に訊いてみたい。
Posted on 08.02.04 by AKAMATSU Masao
Filed under: 赤松正雄の読書録ブログ

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