"男子厨房に入るべし"―こだわり大臣の手料理のすすめ

 男子厨房に入るべからず―今は死語であろうが、戦後第一世代の私でもなんとなく気にはなる。この15年ほどは週末を除き、単身赴任が続く。昼夜を分かたず外食が多い。しかも移動の車中でも会議の合間にも弁当が専ら。たまには自分で料理を、と思って挑戦することも。しかし、生兵法はやっぱり怪我のもとだ。

 そんな私にとって驚異的な本が届けられてきた。伊吹文明『いぶき亭 四季の食卓』。大臣を歴任。派閥の領袖で、今は自民党幹事長。そんな人が「おいしいものは自分でつくろう!」と、こだわりの手料理についてことこまかに披瀝している。後援会紙に25年にわたって連載されたものを、春夏秋冬に分け、整理してまとめたエッセイ集。政治にまつわるものは生臭いからか排除され、いきのいい旬の材料やらあまりものをさりげなく使っての伊吹流レシピは見事で、すぐにでも作りたくなる。一例だけ紹介しよう。

 豆腐の味噌炊き。鰹と昆布の合わせだしに味噌を溶き込み、豆腐を一丁丸々煮込む。豆腐箸で無数に穴をあけ、味を行きわたらせることがコツ。グラグラ煮たったら、温めた皿に豆腐だけをとりだす。さらした細い細いねぎを豆腐が隠れるほど盛りあげて、山椒の粉をふる。冷やの茶碗酒をグイとやる。ああ人生ていいもんだな

 飲んで食べる話ばかりではない。しばしば大岡信『折々のうた』を開く。歌人のいぶきも漲っている。初めて私が当選した頃、政治改革特別委で質問した。答弁者の一人だった伊吹さんから「なかなか良かったよ」と声をかけられた。お世辞と分かっていても嬉しかった。新米を研ぐ手捌きの鮮やかさを改めて今に思う。

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