警官三代の生活史に騒がぬ血

 『エトロフ発緊急電』や『ベルリン飛行指令』など先の大戦に題材を求めた国際情報小説や、北海道を舞台にした冒険推理小説などで次々とヒットを飛ばしてきた佐々木譲。彼がまだ直木賞を受賞していないのには驚く。昨今は『警察庁から来た男』など警察ものに新境地を開いている。漆間前警察庁長官にある会で出会った際に、タイトルがタイトルだけに「読まれたらどうですか」と勧めたものだが、果たしてどうなったか。

 その佐々木さんが今年前半の直木賞をもう一歩で取り損なった作品が『警官の血』。それだけで読む気がそそられた。しかも、受賞争いに負けた相手が、若い女性の作品である桜庭一樹『私の男』とくれば、ますますその気分は高まる。

 三代に渡る警官の生活史は、それぞれに時代を反映して興味深い。祖父の場合は、「仁義なき戦い」を、父のケースは、「浅間山荘事件」を、そして息子についてはあの「ホリエモン騒ぎ」を私的には想起させられた。上下二巻はいささか長すぎるとの感が否めないが、全編これ「三丁目の夕日」だと思えば我慢出来なくもない。ただ、やはり今風の超飛び抜けた女性の作品には負けてしまうのも無理ないかも。ひとつひとつの話しの展開にドラマ性がなさすぎるし、あまりに淡々と話が運びすぎで物足りないというのが正直なところ。祖父や父の不慮の死の描き方があっさりしすぎで興奮や義憤を感じないのも不満だ。それもこれも後半の息子の話しに至る序論と思い我慢したのだが、肝心のそれも・・・。

 最後まで投げ出さずに読んでおきながら随分とけちをつけてしまった。これまでの佐々木譲作品群から期待が大きすぎたのかもしれない。

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