路上観察者であり、「老人力」なる言葉を生み出した不思議な人物―赤瀬川原平の『千利休 無言の前衛』を読んだのは白洲正子の薦めによる。この人が「面白い」と言う本は本当にスゴイ本のように思えてつい手が出る。
この赤瀬川さんの言う「トマソン物件」には笑ってしまう。元ジャイアンツの四番バッター、ゲーリー・トマソン。大振りするがあまり球が当らない。要するに、意味のない存在をさす。街中を観察してると確かにでくわす。この本では入り口のない階段が第一号物件としてあげられているが、実は、国会にもある。議員会館から議事堂に通じる階段の両脇に、本来は壁でなければならないはずなのに、扉がついている。向こう側から開けようものなら墜落するしかないというしだい。何時も見ながら一人私はにやりと笑っている。意外に気付いてる人はいないらしく、この物件誕生の秘密を未だ知ってる人にはでくわしたことがない。
「冗舌な権力者・秀吉との確執の中から無言の芸術・縮む芸術を考案し、斬新な発想と柔軟な感性で桃山時代を前衛的に生きた芸術家」―千利休を改めて考えさせられた。とりわけ「楕円の茶室」を発想した赤瀬川さんは、千利休と同次元に生きてる感がする。かつての野上弥生子『利休と秀吉』を読んだときに比べ、利休がぐっと身近に感じられたのは効用であろうか。
さらに白洲正子『おとこ友達との会話』を読むと、冒頭に赤瀬川さんが登場し、この本のことが取り上げられている。以下、前登志夫、仲畑貴志、青柳恵介、河合隼雄、養老孟司、多田富雄などといった渋い面々が続く。いずれの対話も溜まらなく面白い。付箋をつけながら読んでいると、いつのまにか殆どの頁に花が咲いたようになってしまった。
Posted on 08.05.09 by AKAMATSU Masao
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