老後の不安をあおりたてる愚に加担する白書

 この時期、各省庁からの白書や年次報告などといった恒例の出版物への承認を求められる機会が多い。先日も「高齢社会白書」「科学技術白書」と立て続けに説明を受けた。前者では(後者については後述)、1)高齢者世帯人員一人当たりの所得(189万円)は、全世帯平均(206万円)を若干下回る 2)生活保護を受けている高齢者の割合は増加傾向 3)高齢者間の所得格差、資産格差は大きい 4)高齢者の要介護者数は急速に増加 5)後期高齢者の2割以上が要介護者 6)交通事故死者数に占める高齢者の割合は年々増加 7)火災による死者の半数は高齢者 8)消費トラブルの被害は増加傾向―などと暗いデータばかり。もう少し明るい話題を出せないものか。

 巻末に事例一覧として 1)自動車学校のスクールバスが無償で高齢者の移動手段として利用 2)地域の高齢者を活用することで、地域振興に役立てている 3)定年制を廃止し、高齢者の経験や技術を活用 4)高齢者が日常的に高齢者を支えている 5)地域の住民が自ら率先して街づくりに取り組んでいる 6)生涯現役を目指してこれから高齢期を迎える中高年者への支援 7)助産院とデイサービスを併設し、赤ちゃんと高齢者が交流している―などが挙げられている。それぞれ一つか二つの実例が挙げられているにすぎないが、正確に掌握されているのか。今後はこれらを数量化する努力が必要だと思う。そのことで、地方自治体の現場において高齢社会の明るい面での競争が始まって行くに違いない。

 時あたかも後期高齢者医療制度をめぐって、高齢者からの反発が強い。現場の声を聴かず、中央での机上の処理に終始したのではないかとの疑念を否定しようというのではない。ただ、老後の不安をあおるだけでいいのか。高齢者の医療制度議論のただ中に出される「高齢社会白書」にしては、政府として不用意すぎよう。高齢社会のありようというものを、もっとプラス面からも論じる機運があっていいのではないか。

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