台湾における政権交代は今後の日本にとってどんな影響をもたらすか。中台接近で日中が”緩衝島”なき直接対峙の危機に瀕するといった見方(金美齢氏)から、「外交打開の予感」(岡崎久彦氏)といったものなどかまびすしい。私にとっては、これまで親しくしていただいた許世楷氏(台北駐日経済文化代表処代表=台湾大使)と別れなければならないということが大きい。以前に読んだ、同氏と夫人の盧千恵さんの共著『台湾は台湾人の国』は政治的意思の強い本だが、同時に実に麗しい夫婦愛に彩られた名著だと思う。戦前の日本統治下での思い出から始まり、台湾独立を目指しての33年間の闘いなど台湾を考えるうえで格好の手引書である。冒頭、夫人に対して「普通の人生の数倍にも匹敵する人生を提供した」と、共戦の友への愛ともいうべき心情を吐露されているのが微笑ましくも羨ましい。「中国の執拗さに負けて、台湾は中国のものだと(日本人が)認めようとなること」が一番問題だと繰り返し述べていることが印象深い。
許大使は二年ほど前の来阪の際に、私の求めに応じて姫路まで足を伸ばしてくれた。初めてという姫路城に一緒に昇ったのだが、大きな身体で急な階段を上がったり降りたりには気を遣ったものだ。かつて、アジアオープンフォーラムで台中にお邪魔した際に、お世話になったお返しのつもりだったが、どこまで返せたか自信はない。
夫人には『私のなかのよき日本』という回想50年の著作もある。このなかで、台湾の世界保健機構(WHO)への参加問題のくだりを発見した。私の厚生労働副大臣時代に、なんとかならないものかと尽力したことを思い出す。文中、麻生太郎(当時外相)、塩崎恭久(外務副大臣)とともに、06年1月の鳥インフルエンザ専門家会議への台湾参加に動いてくれた政治家として私の名前も挙げられているのには正直驚いた。
私の政治への開眼は昭和40年代後半の「日中国交回復」に端を発する「中国」による。一方、衆議院議員となって15年の今は、「台湾」がその関心の中心にある。許大使夫妻の離日は一時代の終わりだが、新たな台湾発展の起点になってほしい。
Posted on 08.06.13 by AKAMATSU Masao
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