いま米国に駐在している新聞各社の特派員に、私の親しい友人が三人ほどいる。そのうちのひとりに、昨夏に訊いてみた。いま、アメリカで読まれている本で、お勧めは、と。即座に『マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝』ですね、との回答が返ってきた。その頃、米国大統領選挙は、オバマ対ヒラリーの民主党指名を巡りデッドヒートの真っ最中。決着がついてから、と棚上げしていた(ヒラリーが勝っていれば、彼女の自伝『リビング・ストーリー』を読むつもりであった) 。このため随分読むのが遅れてしまった。
この自伝、まことによく書けており、実に面白い。幼少時の家族における葛藤、青春期の悩み、自身のルーツを探るケニアへの旅など、凡庸な作家を遥かに越えた見事な出来ばえだ。評価の声は高いが、産経新聞23日付けの「小さな親切、大きなお世話」で曽野綾子さんが「アメリカは一人の大統領を得たが、文筆の世界は優秀なノンフィクションライターを失った。オバマは、人種問題、アフリカ問題などについて、主観と客観との双方を十分に交えて書くことのできる世界で一流の書き手だ」としているのは、全くわが意を得たりとの感がする。ただし、ミシェル夫人との出会いが殆んど触れられていないのは、物足りないが。
先の就任演説で、ノー原稿で20分喋ったのは凄いことだと思ったが、実際は違ったらしい。それなりの仕掛けはあったようだ。しかし、だからといってその演説の価値は落ちるものではない。大むこうを唸らせるフレーズがない平板な中身だと思ったが、専門家によると、旅(ジャーニー)という言葉がキーワードとして巧みに使われていたとのことで、米国の歴史とこれからの旅立ちが挟み込まれていたという。
実は、いま爆発的に売れているCD付き『オバマ演説集』を購入、時々聞きながら対訳に目をやっている。今から35年程前に高校の英語研究部にいた私は、暗唱大会にでて、リンカーンのゲティスバーグ演説を覚えた。これは今でも忘れていず、口を突いてほぼ全文がでてくる。バカのひとつ覚えなのだが、芸は身を助けるで、調法している。これに味を占めて、ケネディ、キング、オバマの演説のさわりを覚えてみようとの誘惑にかられているのだが・・・。
今週は、半藤一利『幕末史』を読みはじめた。相変わらずの名調子で、激動の幕末期から明治10年西南の役ころまでを整理するのにもってこいの本だ。
Posted on 09.01.25 by AKAMATSU Masao
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