またしてもはまった「佐藤優の罠」

 二冊の本を同じ著者が出版すれば、上下二巻と呼ぶのが普通。それを左巻、右巻と呼ぶ本を読んだ。佐藤優と田原総一朗の対談『第三次世界大戦』左右二冊。左巻は「新・帝国主義でこうなる!」と右巻は「世界恐慌でこうなる!」。いずれも滅法刺激的で面白かった。(佐藤優の『テロリズムの罠』も左右二巻で、これまたお薦め本)

 第三次大戦は既に始まっているという前提で、国際情勢の見方の思考実験をしたとのふれこみ。突っ込み役の田原の見事さもあって、現代世界の抱えている課題が一望にでき、調法すること受け合い。様々な「考えるヒント」を頂いた。例えば、原発から核兵器を考えるという問題。日本では核武装反対という人は、原発も反対という。逆に核武装論者は、日本経済を発展させろという立場。これはともに論理が矛盾していると指摘する。核兵器を持つと、核拡散防止条約(NPT)から離脱しないといけなくなり、ウランが手に入らなくなり、原発は建設できない。つまりは、原発と非核3原則はパッケージだということを知らなければならないという。「原発こそが現時点で日本の核武装を阻止する、非常に有効なテコ」だということを皆正面から議論しないのは不思議だとの佐藤の指摘は重要だ。

 右巻の「日本を襲う貧困の広がり」も読ませる。鈴木宗男衆議院議員との関係もあり、北海道の記述が多い。そこから今の日本の貧困を分析するうえで、地域的貧困の角度、そして質的貧困の問題としての大学院を卒業したのに定職につけない「高学歴ワーキングプア」の観点など、アプローチに角度をつけることの大事さを知った。

 「テロリズムの罠」左右二巻では新自由主義からファシズムへの胎動といったものを予感させられたが、「第三次大戦」左右二巻からも多くの切り口から世界の近未来をのぞき見せてくれた。しばらく離れていた「佐藤優の罠」にまたもはまってしまった感が強い。

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