タイトルにまずは唸った。『在日の耐えられない軽さ』―いうまでもなく小説「存在の耐えられない軽さ」を借用したものだが、云い得て妙だ。鄭大均・首都大学東京教授の自叙伝風の著作である。鄭さんについては、私の知人に同教授の大学ゼミ生がいたり、年初の新聞コラム(読売)での永住外国人参政権問題での発言(「在日」を永続化させる、として反対を主張)などを通じて、かねて関心を持ってきていた。ただし、その著書にむきあうのはこれが初めて。いわゆる日韓併合から100年。隣国との関係に改めて思いをいたすためにも、また政治的課題、いや政局的課題としての「参政権問題」を考えるうえでも大いに参考になる。
一読してきわめて優しい語り口には驚くばかり。うらみつらみは抑えて淡々と事実が述べられる。在日に特別な思いを持っている人も、またそうでない人も、新たな出会いとなる。在日一世としての父上の数奇な人生や、一途なまでの戦闘的コリアンとしての妹さんの生き様。これら肉親のある種当たり前の姿が鄭さんの存在を対極にひときわ際立たせている。
韓国・朝鮮籍を持っている在日諸君に、とあてた一番最後の文章群が胸を撃つ。「いまだに祖国の統一だとか民族だとかいう者もいるが、そういう浮世離れは相手にしないほうがいい。日本人になっても、ご先祖さんの地にはノスタルジアを感じる。そのくらいのスタンスが在日には似つかわしい」―これを読んで安堵しない日本人がいるだろうか。壮大な大人に出くわしたような思いがしてならないのは、当方が恐らくありきたりの小人であることを意味しているのだろう。
Posted on 10.03.06 by AKAMATSU Masao
Filed under: 赤松正雄の読書録ブログ

Leave a Reply