丸山眞男を「音楽」がときほぐす

 安仁さんこと、故安東仁兵衛さんが随所に登場するからということで、中野雄『丸山眞男 人生の対話』を市川雄一党常任顧問から薦められた。安仁さんはかつて公明党機関紙局編『日本共産党批判』を絶賛してやまず、市川さんとは親交があったと聞く。「時代と周りに人を得ていたら『昭和の坂本竜馬』の役割を果たしたかもしれない一代の快人物」だとの中野評は衆目の一致するところ。

 あまたいる丸山眞男の門下生のなかで、安仁さんと中野さんは共に異色。「東大学生運動の輝ける元闘士」と日本開発銀行の幹部を経ての音楽プロデューサー。中野さんは前作『丸山眞男 音楽の対話』を通じて、丸山と音楽の関係を世に知らしめた。恥ずかしながら、殆どそれを知らなかった私としては、この二作は、難解な丸山眞男の思想と人物を身近に感じるこよなき手引き書となった。

 丸山眞男が常日頃どんなことを話していたかが興味深く語られる。「これからは個人が自分の存在理由を自分の力で発見して、自分の力で身に着けなければ生きていけない時代になると思う。組織も大切だけれど組織を離れても他人から頼られ必要とされる“個人”を目指すことである」「教師の最も重要な仕事のひとつは『学校を出てからも、独学でいろんなことを学ぶ習慣を、教え子に身に付けさせることだ』」など彼の考え方が次々と披露される。

 また、半世紀にわたって師事した人らしく、知的生産の技術の盗み方も克明に書かれていて参考になる。情報過多のため、自分を失ってどうしていいか分からなくなったある若者のケースには、身につまされる思いなきにしもあらずだった。


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