日本経済新聞といえば、文化欄が充実していることも知られている。私などエンドページから読み出す。面白いコラムも数多あるが、「食あれば楽あり」は欠かせない。著者である小泉武夫さん(東京農大名誉教授)ほど食べるという行為を描かせて真に迫る表現を駆使する人を私は知らない。擬音語を縦横無尽に使いわけ、食欲をそそる手法を確立したのはこの人だけではないか。一度お顔を拝見するか、お声を聞いてみたいものと思っていたら実現した。新年からNHKラジオ第二放送で始まっている『食べるということ 民族と食の文化』で。毎週日曜日の朝に聞いているが、まことに楽しく有意義だ。昨年末に同名のテキストを購入し、読んだ。改めて食べることの大切さを知り、食育の必要性、料理への探求の思いなどが高まってきた。
この本を通じて知ったことの一つは、都道府県別に見た沖縄の男性の平均寿命が一位から二十五位に下がったことの原因が何かということ。アメリカの占領、統治下にあった期間が長く、伝統的な食生活が崩れてしまったことが大きいとみる。似通った気候風土にある奄美大島や徳之島が健康で長寿を保っているのに、沖縄がそうでなくなりつつあるのは米国風の食生活に侵されたからだ、と。伝統的な和食を食べ続けてきていれば、との指摘は、衝撃的な響きを持つ。女性は未だ一位であるが、やがて沈みだすとまで言い切る。沖縄県の人びとはどう聞いているだろうか。
私のような戦後の食糧難時代に生まれ育ったものにとって、親の苦労が改めて思い知らされる。母親からお前は大豆で大きくなったとしばしば聞かされたものだ。その点でも日本人の知恵が生んだ大豆六大食品との下りは興味深い。味噌、醤油、豆腐、湯葉、高野豆腐、納豆を日本の食文化を大きく左右する六つの偉大な発明とまで規定している。
このテキストを読み、今の日本人が伝統的な和食の持つ魅力を忘れてしまい、身元不明の食事に流されてしまっている危険性を思い知った。いつの日かに、男の手料理を学び、伝統的な和食を自らの手で、自ら食してみたいとの欲求に駆られている。
Posted on 12.01.24 by AKAMATSU Masao
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